「ルールは簡単だ。とにかく逃げろ。朝練は5時から6時の1時間。放課後練習は17時から19時の2時間だ。」
「あの…。」
恐る恐る手を挙げたのは、皆川 響子(ミナガワ キョウコ)だ。
女子の副部長だが、いまいち威厳などはない。
本人も弱気で、練習ではなかなかのタイムを出すのだが、本番では緊張からかいい記録を残せていない。
「なんだ。」
「逃げるって……何から……?」
「先生には敬語を遣う!」
鬼城が怒鳴ると、彼女はすぐさま謝る。
そうさせる雰囲気が、鬼城には十分にあった。
「は、はい!すみません!」
ただでさえ怯えていた皆川 響子の肩が、さらに震える。
「何から逃げるか、と言ったな。」
皆川が、無言でコクコクと頷く。


