そうして、自分の教室前まで来た時であった。
遂に虞が現実となる。
背中にのしかかる様な圧力を感じて、恐怖が直ぐ後ろに迫っていることを悟った。
グフーっという生温かく血腥い息が頭上から降る。
振り返れば後悔する。
恐怖を見る。
信じたくない現実を突きつけられる。
解っていながらも、振り返らずにはいられなくなった。
恐る恐る後ろを振り返り、目に映ったのは、正に鬼の左腕が翼に向けて振り下ろされる瞬間であった。
長い爪がブンッと空を切る音が聞こえ、翼は咄嗟に教室の中へ逃げ込んだ。
ガシャーン!!!
派手な音と共に教室のドアのガラス窓が粉々に砕けて、吹き飛ぶ。
「ーーっつ!」
飛んだ破片が頬を掠め、一筋の赤が流れた。
しかし、その程度の事など構っていられない。
鬼の次の一手に集中する。
翼はなるべく鬼から離れようと、教室内を横切り廊下とは逆側へと移動する。
鬼は……
入ってこない?
ドアを挟んだ向こう側に鬼の影は見えるのだが、こちらへ来ようという雰囲気が全くない。
ただ、前後のドアを行ったり来たりしている。
なにが狙いだ?
自分をこの教室に閉じ込めて、どうする気なのだろうか。
訝しみ、鬼の動きを凝視していた時であった。
ガシャーン!!!
窓が割れる大きな音。
そして、気づいた瞬間、痛みよりも早く見えてしまった。
肩に突き刺さる鋭い爪と、じわりと溢れ出てくる赤い液体を。


