ネチョリと口に含んだ何かをビチャビチャとおぞましい音を立てて咀嚼している。顔を向こう側に向けている為、何を咥えているのか分からないのが不幸中の幸いか。

他の一体の鋭い爪は体を貫き、まるで壊れた人形のようにぐったりとした生徒の四肢を振り回し、弄んでいた。



そんな、この世のものとは思えない光景に膝は震え、今にも崩れ落ちそうになる。

逃げるなんて到底及ばない。

息をする事すら忘れて、ただ呆然と立ち尽くすことしがができないでいた。




そうして、やはりその時はやって来る。

腹に顔を埋め、ずるずると内臓を引きずり出していた鬼が、ふと動きを止め、顔を上げたのだ。



強ばり見開いた翼の目と、鬼の赤い目がカチリと合わさる。





「グアッ、グッ、グルルー。」





まるで、待ち侘びた様な、歓喜に震えた様な色を含んだ唸り声を鳴らすと、他の二体もこちらへ顔を向ける。

光る六つの赤い目全てが翼に向けられていた。



逃げなければ!


逃げなければ、殺される!







そんな事、分かりきっている。


しかし、それでも足が動かない。



蛇に睨まれた蛙の方が、まだ生易しい状況だ。




しかし、一体がのそりとこちらへ一歩踏み出した瞬間、ハッと何かが全身を駆け巡った。

そうして、縫い付けられた足の呪縛が遂に解け、体を反転させると堰を切ったかのように
勢いよく走り出した。


膝は震えている。

それでも、なんとか動き出した思考と身体にただただ縋るしかないのであった。