ーー……いない?
螺旋階段をカンカンと鳴らしながら降りていく。
鬼の姿はどこにも見えない。
用心深く、しかしスピードは緩めずに辺りを見回すがそれでも影を見ることさえない。
耳にも神経を集中させるが、あの独特な唸り声も息遣いも聞こえない。
この事に普通なら安堵すべきなのだが、翼は言い得ない不安を感じていた。
いつもがいつもでない。
鬼城の不気味な笑い。
自分を狙っていた筈の鬼の所在。
やけに静かで平和だからこそ感じてしまう恐怖。
困惑する頭を整理し切れないまま、翼は走り続けた。
そうして、一周目が終わり再び校舎へと帰って来る。
時計を見ると、いつもよりペースが早かったのか、笛が鳴るまであと10分も時間があった。
走るのを止める訳にもいかず、仕方なく二周目に差し掛かり、教室の前を通り過ぎた時だった。
違和感と恐怖の正体がそこにあった。


