校舎へ入り、いつものスタート地点に立ったが落ち着かない。
いつも通りが何かズレている感覚がしてならない。
あの鬼城の表情が脳裏を過ぎっては消え、そして全身が粟立つ。
「落ち着け。冷静になれ。いつも通りだ。」
目を閉じ、自分自身に暗示を掛ける様に呟く。
「いつも通り。逃げ切る。俺なら出来る。」
脳内が整頓され、思考がクリアになっていく。
大きく深呼吸をして、脚に十字架を掛ける。
「よし。」
呟いたと同時に、あの歪な鐘が鳴った。
景色がくらりと次元を変えたように曇る。
翼はゆっくりと走り出した。
大丈夫。いつもの調子だ。
むしろ、タイミング良く順調なスタートを切れた。
地面を蹴る脚が軽い事に安堵し、スピードのギアを徐々に上げていく。
開始、15分。
遂にあの螺旋階段まで来た。
あの鬼は居るだろうか。
今回も、喉を鳴らして今か今かと自分を待ち侘びているのだろうか。
ガチャリー……
扉を開ける。


