「バスってなんかワクワクするよな!」
朝練が終わり、会場へ向かうマイクロバスにて。
緊張する者が多い中、呑気に話し掛けてくる人物など決まっているが、翼は首を回し、後ろからひょっこりと覗いてきた顔と目を合わせる。
「そうか?つうか、危ない。」
颯太の短髪をぐいっと片手で抑えるも、全く効果はない。
むしろ、更にずいと身を乗り出してきた。
「遠足みてぇじゃん!俺、おやつにバナナ持ってきた!」
「浮かれ過ぎだろ。落ち着けって。」
「浮かれたくもなるだろ!今日の朝練は全員無事だったんだからよ〜。」
そう言って、颯太は本当に嬉しそうに笑った。
嬉しい気持は翼も同じだ。
脱落者が0なのは鬼の数が増えて以来、初めてだ。
短縮練習だったとはいえ、この結果は自信にも繋がる。
「だからって、あんまり騒ぐなよ。あいつの気に障るぞ。」
「やべっ。まじか。」
鬼城の存在を示唆すると、さすがの颯太も頭を引っ込め静かになった。
鬼城は静かにバスの助手席に座っていたが、その静かさが逆に恐ろしかった。
例えるなら、何か少しでも間違えた触れ方をすれば、即座に破裂しそうな爆弾だ。
バスはもう間もなく、会場に着こうとしていた。


