「集合!」
翌日、いつもの時間にいつものグラウンドに点々と集まる部員達を、鬼城は鋭く放った一言で掻き集めた。
「30分だからといって気を抜くなよ。大会に出たい奴は生き延びるように。以上。」
そして、挨拶も無しにそれだけを言うと、早々に話を切り上げた。
「鬼城の奴、いつもとあんま変わんねぇな。大会当日だっつうのに。もっとネチネチなんか言ってくると思ってたんだけどな。」
校舎に向かう途中に話し掛けてきた颯太が、拍子抜けだと言わんばかりに肩を窄める。
「大会だと、誰も死なないからな。興味ないんだろ。」
「あー、なるほどね。ケッ、悪趣味なこって。」
「イメトレしながら走れよ。鬼には十分気をつけながらな。」
「わかってるって。まずは、この30分を死ぬ気で乗り切らないとな!」
大袈裟にガッツポーズをする颯太を見て、翼の口角が思わず上がった。
そうだ。
まずは、この30分だ。
大丈夫。
今までどれだけの時間、あの恐ろしいバケモノから逃げてきた?
油断はしないが、この腕や脚は何よりも信頼出来る武器だ。
チャンスを前に、先走りそうになる気持ちを落ち着け、翼は颯太と別れ、校舎の中へと入って行った。


