校舎の入口に近づくと、水の音が聞こえた。

グラウンドと校舎の間に壁を作る水飲み場に誰かいるようだ。



「……翼?」




1つの影が、ビクリと反応した。

蛇口からは勢いよく水が流れては、コンクリートに打ち付けられていた。

聞こえなかったかと、さらに近寄る。



「おい、翼!」



肩に手を置いて、再び呼びかける。


バシリ!


一瞬、何が起こったのか理解できず、颯太は翼と、跳ね除けられた己の手を交互に見た。

そして、翔が近くに居ない事と、親友の只事ならぬ雰囲気を鑑みて押し黙る。

掛ける言葉を慮るが、見つからず、口を開けては閉じるを数回繰り返した時だった。



「……殺した。」




翼がポツリと力なく呟いた。

颯太は耳を疑った。



「……は?今、なんて……?」




相変わらず吹き出る水道の水の音が邪魔をして聞き間違いを起こしたのではないかと、むしろそうであって欲しいという願いを込めて聞き返す。



「俺が……翔を………翔…を……!!…っ……うっ…うぇぇぇ……」




嘔吐を紛らわすように、蛇口の真下に頭を入れてザァザァと水を被る。




「ゴホッ…!ゲホゲホ……っ…!」




喉と口を支配する酸と、水の冷たさが気持ち悪い。

翔を突き落としたこの腕が、その感触が、何もかもが気持ち悪い。


颯太は何も言わずに翼を見ていたが、少しして嘔吐が治まり始めると、無言のままタオルを渡した。