ピィーーーー!




どれだけ走ったかわからない。

耳を鋭く指すあの笛を聞いて、翼は反射的にスピードを緩めた。

いつもなら、そのままジョギングのペースにもっていき、グラウンドまでにダウンという流れだが、そんな余裕はなかった。

緩々と落ちていくペースに、遂にことりと脚が止まった。


止まった瞬間に、手足が震え出す。

息を吸えば喉が震え、心臓の鼓動が次第に大きく聞こえてくる。

耳が心臓に近づいたみたいだ。

鼓膜までもドクドクと波打っている。



考えたくなかった。

だが、翼の右腕は最後に触れた翔の重みをしっかりと覚えていた。





殺した。



俺が殺したんだ。




自分が生き残る為に。









引き裂かれていく身体。

溢れる血の匂い。

そして、自分に助けを求めてくる親友の声。




「……っうぐ。」




喉に酸っぱいものがこみ上げてくる。

吐きそうだ。



口に手を当て、翼はグラウンドに背を向けて走り出した。