階段の柱や枠組にぶつからずして落ちているのは不幸中の幸いである。
しかし、頭からの落下というのは些か問題だ。
昨日と同じ手は使えない。
だが、策が無いという訳ではなかった。
危険が大きく不安が残るが…
「やるしかない…か。」
このままではどうせ死ぬ。
翼は覚悟を決めると、気を集中させる。
―…集中しろ。
―…集中して、見るんだ。
息を長く吐き、勢い良く吸い込んだ。
瞬時に肺が空気で膨らみ、自然と上半身に力が入る。
意識は眼に集中させ、上へ流れていく螺旋階段を必死に追う。
―…ここだ!!
翼は口をきつく結び、両手を螺旋階段の手すりへと伸ばした。
ベシッと叩き付ける音と共に、翼の両手が手すりを掴む。
必然的に腕はそこで落下を止め、残る。
しかし、その他の翼の身体は落ち続け、今度は脚が先陣を切って下へと向かおうとする。
「…っく!」
腕に恐ろしい程の負担が掛かる。
しかし、離す訳にはいかない。
腕を離せば鬼の餌食となるのは確実だ。


