翼は、また何も言えなかった。

理由が人間として至極当然の答えであった事もだが、それ以上に翔の表情が貪欲な…

それこそ鬼のような形相をしていたからだ。



「俺はこんな所で死にたくねぇんだ!何を犠牲にしてでも絶対に生き残る!例え、他の奴らから裏切り者と蔑まれようがなぁ!」



今までの冷たい態度から一転。

翔は叫ぶように怒鳴り散らした。



翼は畏怯の念に駆られた。

翔という個体にではない。

人間というものの、生に対する執着心にだ。

これ程までに執念深く生を望むのか、と恐ろしくなった。


そして、ハタと気付いた。





―…自分もそうではなかっただろうか?




と。



鬼に追われ、正に絶体絶命であった今朝の部活。

あの時の翼は、ただ生き残ることを念頭に置き、それに固執していた。

ならば、あの時の自分は、今の翔と同じではないか?





翼は、自分の内に潜む鬼に気付き、しばし考え込む。