「―…で、図書館から螺旋階段を下りて、裏山を一周。また、ここに戻って来て同じコースをもう一周だ。」
翼が教室の前で翔にコースの説明をする。
翔は、ただそれを聞いていて、説明が終わると、
「わかった。」
とだけ言って、行き先を見つめた。
そんな態度を見て、翼の心に複雑な糸が絡む。
やはり、いつもの翔とは様子が違う。
翼の知っている翔は、もっと明るく、友好的で、言ってしまえば…まあ、不真面目が目立つ軽い感じだった。
しかし、今はとても冷めた雰囲気を身に纏っている。
颯太の話で聞いた、『度が過ぎた悪ふざけ』といった風でもない。
「もうすぐ始まるな。」
「ん?あ、あぁ…そうだな。」
突然翔に話を振られ、挙動が空回る。
翔の意図が…読めない。
「なぁ。」
「なんだ?」
「翼さ…ほんとは…」
《ピィーッ!》
何か言いかけた翔の言葉を、鬼城のけたたましい笛音が掻き消した。
「悪い。なんて言ったんだ?」
「いや、いい。行こうぜ。」
そう言った翔は、もう走り出していて、表情を読み解くことは出来なかった。


