「杏奈、」 『…っ、』 「ごめん、なんにもしてやれない…」 震えて小さくなった彼女が、どうしようもなく切なかった。でも、愛おしかった。 人を好きだと思う感情は、殺意に似ていると思う。 ふつふつと沸き上がる、熱いもの。それが、今の俺には抑えられない。 なんとなく一緒に居たから、なんとなく一緒になった奏音には、悪いけど、感じたことないくらいの、強い思い。 奏音を愛しているのも、確かだ。――…でも。