「失礼します、美羽です」


「飛鳥です」




しばらく待っていると、部屋に2人、ホステスが登場した。

ふたりとも、ブロンドに近い明るい色の髪を、これでもかというくらい巻いてアップにして。






「お、美羽ちゃんのヘルプに飛鳥ちゃんが付くの、久しぶりだね」


『はい。ちょっと体調を崩してて、しばらくお休みしてました』


「今日は俺も、新しい若いの連れてきたから」






ふたりは俺に名刺を手渡す。

美羽というホステスは、この店のナンバー1だという。

ピンクのドレス。スリット入り過ぎでしょ。




飛鳥というホステスは、美羽よりは年も若い感じ。

美羽のヘルプでこの部屋に来たらしい。

ブルーのドレス。こいつもスリット入り過ぎ。






『飛鳥です。よろしくお願いしますね』


「あ、神崎でーす…」


「こいつクラブに来るの、初めてなんだよ」


『あら、じゃあ楽しんでもらえるように頑張らないとですね』


「はは。よろしくでーす…」






上司は美羽の常連らしい。

ずっとべったり。なんか…こんな姿見たくなかったし。




受け取った名刺をスーツの胸ポケットにしまう。

ヘルプの飛鳥は俺に付いて、タバコの火をつけたり、酒作ったり

せわしなく、サービスをしてくれた。




悪くない、とは思う。この至れり尽くせり感。

奏音は忙しい女だから、自分のことをまず優先。

俺だって一緒の身だから、別に文句はないし、それで上手くいっているけど。




「尽くされる」という感覚を、俺は知らなかったことに気がついた。

いいね。彼女に尽くされてる男って羨ましい。

でも俺は、別にいいや。

尽くされるなんて、性に合わない。