車を走らせながら、そういえば、と思う。
ここは杏奈の家の近所だ。
予想外に早く仕事も終わったことだし、杏奈の家に寄って帰ろうと決めた。
杏奈のマンションの下に到着すると、カーテンの開けられた窓から光が漏れていた。
まだ宵の口とは言え、カーテンくらい閉めればいいのにと思いつつ階段を上がる。
305号室。このドアの前に立つのは、もう何度目だろうか。
そういえば、金森と接触したことを杏奈に伝えそびれていたことに気がついた。
今度でいいや、と思うことは忘れてしまいがちだ。
今日は杏奈にあいつのことを話そう。そして、いつか一緒に長野に連れて行くんだ。
土下座の夢も、そう遠くない。
チャイムを押す。
ピンポーンという音が確かに部屋の中で響いたのに、杏奈が出てこない。
もう一度押してみたが、状況は変わらなかった。
電気を点けたまま出かけているというのだろうか。それともうたた寝をしてしまっているのかもしれない。
ドアノブに手をかけてぐるりと回すと、糸も簡単にドアは開いた。
