「君達、下校時刻はとっくに過ぎてるよ。そろそろ帰ってもらわないと僕が困るんだけど」
時刻はちょうど7時。いつも学校を見回る時間帯。
「あ、ごめん・・・」
教室の机に腰を下ろした男が決まり悪そうに謝る。
その顔には、見覚えがあった。
「あれ?君は・・・」
言い終わらないうちに彼は僕の言葉を遮り、こっちに近づいて来た。
「覚えてる?俺の事。井川・・・」
「洋祐君でしょ?覚えてるよ」
言葉を遮られたのが、気に食わなかった僕はわざと彼の言葉を遮った。
「俺の事覚えててくれたんだ!超うれしー!!」
彼は笑顔で言った。
僕にはそれがどうして嬉しいのか分からなかった。
「別に。昼に会ったばっかりだし、覚えてるのは当たり前でしょ」
ただ、彼の言葉に対して、冷たく返した。
「それでもやっぱうれしーよ!!」
彼はまた、笑顔で言った。
「やっぱり君は変な人だね」
「えっ?」
「なぁ、俺の存在は無視なわけ?ひどくね?」
僕と彼の会話に入り込んで来たのは、彼の後ろに立っていた男だった。
「あ、忘れてた。こいつは俺の親友の藤田 葵」
藤田という男は軽く頭を下げた。
「どーも。藤田です」
「どうも。苑田 棗です」
僕も軽く頭を下げる。
「君と会うのは、2回目だね」
僕の言葉に井川が大きく反応する。
「えっ!?2人とも会った事あんの!?」
井川の問いかけに藤田が応えた。
「前に、俺が他校で揉め事起こした時に、いろいろ世話になったんだよ」
「あの処理は大変だったよ。わざわざ土下座しに行ったからね」
僕は嫌味を含めて言った。
「そ、それは本当に悪かったし、感謝してる」
藤田は僕に頭を下げた。
「過ぎた事だし、もういいけど。早く帰ってくれる?下校時刻は過ぎてるし、僕も暇じゃないからね」
僕はそう言い残し、教室を後にした。