「ウチ、ケータイ持ってないんですよ」

「あ、そうなの」

意外と思われるかもしれないが、私は彼女がケータイを持っていないことを、そのときはじめて知った。

まぁ、確かに彼女くらいの年齢なら、ケータイを持ってたら常にイジっているだろうから、それまで気づかなかった私がニブかっただけなのだが。

「でも、奥さんからの連絡もあるし、今ウチシフト作ってるでしょ? その連絡とかにも、ケータイは絶対必要だと思うんですよね」

「そうだね」

「でも、ウチ未成年だし、保険証とかも持ってないんで、ルカちゃんの名前だけ貸してもらえないかと思って…ルカちゃんならもう成人してるから、身分証明書だけでケータイ作れるし、お金は、コンビニで払える方法があるから、毎回請求書のハガキ渡してもらえれば、絶対ルカちゃんに迷惑かけないし…」

「うーん」

「ダメ?」