「それって、ユウカにあげたやつですか?」

「そう、あのとき私たちが思ったことを、ユウカちゃんにも感じてほしいと思ったんだけど…」

奥さんは目を伏せた。

「そのときに私が思っていたのは、過ぎ去った時間は取り戻せない、ということだったの。

ルカちゃんがどう思うかはわからないけど、私は主人と事故に会ったときよりも、あのとき、出前を忘れてしまったときにそのことを強く学んだのね。

でも、社長さんはその砂時計を見て、

時間は流れているけど、流れた時間はずっと自分の中に積まれていくんだよ、って言ってくださったの。

だから、あなたは新しいお店を買うべきだ

新しいお店で、また新しい友達をたくさん増やせばいいじゃないかって。

で、私たちはそのお店を買って、今の場所で新しく、でも引き続きうどん屋をはじめたのね。

それ以来、バイトの子もたくさん雇って、

いろんな子がいたけど、

正直、ユウカちゃんほどの子ははじめてだったんだ。