逃がした、ていうと聞こえがちょっと悪いんだけど、

お客さんはみんな、友達みたいなものだと思っていたから、

私はその日友達を一人失っちゃったのね。

それがすごく悲しくて、しばらくは客商売なんてうちらには向いてないんだって思ってたときに、今のお店の場所…昔は花屋さんだったところが、ちょうど売りにだされたの。

私たちはそれを知っていたけど、今のままで大きなお店にしたって、

ちゃんとしたサービスが出来るわけないって、買うつもりはなかったんだけど、

そのときに、今のお店の屋号をつけてくださった社長さんのご夫婦と出会ったの。

社長さんは、今買わなきゃいけない、って私たちに言って

……砂時計をくれたの」

「…砂時計」