だけど、稜子サンの唇は【ありがとう】と確かに動いていた…

そして、笑顔のまま、稜子サンは、スゥゥ…と消えていった…



ガバッと、飛び起きた俺は、沢山の涙を流していた…

切ない…苦しい…
夢だけど…嫌な夢…


壁の時計は6時半をさしていた…

…顔洗ってこよ…

そっとベッドを出て、病室を抜けると、ナースセンターの前で一人、声を殺し泣いてる看護婦が居た。
俺は自分の涙を拭きながら、その看護婦に近付き、声を掛けた…


『どーしたんすか?大丈夫ですかぁ?』

『あ…川崎君…グズッ…さっき…岡部サンが…い…息引き取って…』

『………は?…何…そんな冗談…笑えねぇって…』

嘘だ…これも夢だよな?…看護婦の痛過ぎる悪ふざけだよな?