中村さんが後ろで何でも無いようにたんたんと話す。

ホームから、


『大丈夫。ごめんね。行ってらっしゃい。』


口を大きく開けて伝えてくれる。


「行ってきます。」


「頑張らなきゃな。」


動き出す電車の中、小さくなる美羽を見つめ、涙が溢れて止まらなくなった。


「ほら、これなら食えるんだろ?ちゃんと全部食えよ?」


そっと隣のシートに置かれた包み。

手に取ると、さっきはなかったメモ用紙。


『瞭くんへ。大好きなタラコ多めに入れてあるからね。しっかり食べて笑って下さい。美羽』


「可愛いな、弁当の君。」

前の席からのっそりと顔を出した中村さん。


「さっさと食えよ?写真撮るぞ?」