次の日も私は母の病室を目指し、一目散に廊下を走った。

勢いよく母の病室のドアを開けた。

「お母さん!!」

「あら陽菜、お帰り。あなたまた走って来たのね。」

母は少し呆れたように言った。

「うん。ごめんね。」

悪びれた様子もなく私は母に謝る。

ふと、母のベットの隣りに座る自分と同い年くらいの少年を見つけた。

……誰だろ?

そんな私に気づいた母がその子を紹介してくれた。

「さっき、そこでお友達になった優斗君よ。優斗君は最近ここに入院し始めたのよ。
優斗君、あの子は私の娘の陽菜。仲良くしてね。」

母は私と優斗君を見ながら、お互いの紹介をした。

「初めまして。ひなです。よろしくね、優斗君。」

「初めまして。優斗です。」

軽く自己紹介をすませ、

私はいつものように今日あった出来事を話し出す。

いつもと違うのは、

私の話しを聞く人が増えたこと。


「でね、ひなね、今度の劇でね、お姫さまをするんだ。歌も歌うよ。」

「それは楽しみね。早く観たいわ。きっと陽菜は可愛いお姫様になるわ。」

母は私の頭を撫でながら、嬉しそうに笑った。

私はおもむろに立ち

「今、ちょっとだけ劇で歌う歌、歌ってあげるね。」

息を吸い込み、歌いだす。

白い病室に私の歌声が響く。