「で、入った訳?」
「うん…で、当時の話を色々してたらね、基哉が私に渡すって言ってた誕生日プレゼントの話になって…
彼がそれを知ってる風だったから、思わず『何?』って聞いたの」
「あぁ、10日前だったんだっけ」
「そう。でも教えては貰えなくて…『基哉先輩も先輩も鈍いですね』って…そのまま…」


あの時の感触を思い出して両腕を抱えた。
粘つくような彼の話し方や息遣い、発した言葉の数々。
何よりあらゆることに気が付いていなかった自分の情けなさに嫌悪する。


「その頬はその時の?」
「あ…告白された瞬間力が緩んだからほっぺ引っ叩いちゃって…仕返しされた」


まだ少し痛むそこは、やっぱり端から見てもわかるものなのだろうか。
そう思って左頬に手を当てると、相模が下を向いて肩を震わせている。


「…何笑ってんのよ」
「ははっ!友響ちゃんそんな状況でも流石過ぎ」
「だって…。嫌だったし…貞操観念っていうか…」
「ふうん。誰への?」
「そんなのもと…―」



基哉、と言い掛けてハッと口を噤んだ。

それはいくらなんでもおかしいと、
そんなの違うと気付いてしまった。

私の中、ほんとに基哉しかいないみたいだ―。