首を横に振ろうとしたけど、
今度ばかりは、しっかりと家に帰れる自信がない。
暫く躊躇った後に、私は小さく頷いた。
「ん。それじゃ移動しよう。あんまりここにもいたくないでしょ?
俺の車で待ってるといい。駐車場まで一緒に行こう。俺この外に出てるから…終わったら出てきて。いいね」
ゆっくりとした声で言い聞かせ念を押す。
きっともう一度縦に首を振らなければ
相模はいつまでもこうしてここにいそうな気がした。
機械的に再度頷くと、相模が少し息をついたのがわかった。
「ドアの前で待ってるよ」
そう言って立ち上がり、相模は私に背を向けてドアの向こうへ消えた。
足跡が歪に残り途中で消えている。
昨日から情報が多過ぎて
混乱で頭が破裂してしまいそうだった。
初めて森見くんと逢った時。
可愛い後輩だなって思って、それから逢う度に挨拶を交わす程度ではあった。
軽く立ち話することもあったけど
基哉がいなくなってから、サッカー部そのものを避けていた。
彼の想いに気付ける余裕も、鋭さも
あっさりと基哉を忘れてしまえるほどの潔さも
私にはない。
どうすれば良かった?
どうしていれば
せめて少しでも傷付く人が少なく済んだ?
乱れた制服に触れ、裾の中に手を入れた。
押し上げられた下着を整えても、胸の嫌な感じは一向に消える気配がない。
セーターのボタンをとめて、リボンも結び直すと
肩に羽織ったジャケット以外は見た目だけはどうにか元通りになる。
床に下ろした2本の足が頼りなさげに震え、
立ち上がった瞬間少しだけ足元がフラついて、ロッカーに手を付いた。
鞄の肩紐を握る手も心許ない。
情けなさに苦笑することも出来なかった。

