閉じていた目を開けると、彼は扉を凝視して硬直している。
なんで?鍵は?
それよりなんでもいいから
早く来て―!!
扉から差し込まれたオレンジの細い線がブラインドに描かれ
ゆっくりと広がっていった。
照らされた机、紅茶の缶、そして、彼の顔。
「あれ」
聞き覚えのある柔らかい声が頭上から聞こえる。
「なんだ。お楽しみ中?学校じゃ精々キスくらいまでにしなきゃ」
口を塞いでた手が段々力を失くし
私に触れていた手は緩やかに引き抜かれた。
頭上でドサッと何かが置かれる音がする。
「サッカー部の顧問の先生に頼まれて荷物を置きに来たんだよ。追加のジャージだって」
訪れた理由を言い終わらない内に
森見くんは跳ぶように私の上から離れ、
「ここに置いとけば…っておーい!」
走っていってしまった。らしい。
ようやく私は安心して、大きく息を吐いた。
「全くなんなんだか…」
小さく呟くのと扉が閉まるのが聞こえ、
革靴が鳴らす足音がゆっくりと私に近付いてくる。
なんとか残る力で勢いをつけ、起き上がろうとすると
紅茶の水溜りがぴちゃ、と音を立て、
私の脇でその人物は足を止めた。

