悔しい。けど彼の言う通りでもあった。
結局私が続けていることは
基哉の影が落ちている場所にいたいだけで
私の明確な意志なんて、殆どなかった。
「…悲しいですか?」
彼の手が流れた涙をそっと拭う。
無理矢理組み伏してる人間と思えないほど優しすぎる手つきで。
「あぁ、そういえば基哉先輩が、『眼鏡ないほうが可愛いんだ』って自慢してました
外してもいいですか?」
頷くことも出来ないのに彼は尋ね、何の返事も待たずにそれを外した。
「…ほんとだ。いいですね」
基哉はそんなことまで言っていたのね。
最初に逢った時に言われて以来、コンタクトにすればいいのにとずっと言われていた。
せめて今は
はっきりと見えない方がいいのかもね。
せめてあのブラインドの向こうから誰か気付いてくれないかと思ったけど
部活が終わるのは6時だし、それ以外の生徒はみんな帰っている頃だろう。
5時のチャイムがちょうど鳴って
益々絶望的な気分になった。
その瞬間
扉に鍵が差し込まれる音がした。

