なんで知って…と言いかけて口を噤んだ。
「あ…もしかしてそれも?」
「はい。出逢った場所で渡すって意気込んでいたんですけど…叶わなかったんですね」
心底残念そうな声で言うと、彼は椅子から立ち上がりブラインドを下まで下げる。
出逢った場所。あの屋上。
ほんとの出逢いはきっと教室なのに、そう思ってくれていたんだ。
私の誕生日の10日前に彼はいなくなった。
その時の彼は、一体何を渡すつもりでいたんだろう。
「やっぱり貰えてなかったんですか?」
「彼の手元にはなかったんでしょ?それにご家族だってその後色々大変だっただろうし…
もしあったとしても今更貰いに行くなんて出来ないよ」
「そっか…そうですよね…」
「ねぇ、何渡すって言ってた?」
もしかしたら知っているかもしれないと思い、脇に立つ彼を見上げる。
「知りたいですか?」
「うん…『何が欲しい?』とか聞かれなかった」
「橘先輩って鋭そうで鈍感ですよね」
「あー、少しそうかも。身近なところの方が気付けな―」
子犬みたいに笑ってたはずの彼の顔が
狂気を帯びていく。
「森…見…くん…?」
低く意地の悪そうな笑い声がした。
背中に一瞬の戦慄が走り
逃げ出そうとした瞬間掴まれた腕。
「っ!」
握っていた紅茶の缶が床に落下する。
「へぇ、自覚あるんですね」
「何す―!」

