尋ねると、彼は天井を向いて少し考える素振りを見せ
すぐに私に向き直った。
「なんか、ほんとに大切そうで。ちょっと前まで大笑いしてても、一瞬で穏やかな表情するんです。
基哉先輩も結構モテてたのに、他の女の子に目もくれずでした」
普段見てた基哉の顔と
ちょっと異なる色をした基哉の顔。
もしかしたら、わざと見せずにいたのかもしれない。
あの相合傘のように。
「志望校の話だって嬉しそうにしてました。誕生日に貰った定期入れ見せびらかされたり…
バレンタインのチョコの写メ見せて回ったり。ほんとお茶目な人でした」
「そっか…」
「橘先輩の前では、どうでした?」
「私の前?私の前では…」
なるべく思い出さないようにしていた思い出が
頭の中でネガのようになって解放されていく。
「優し、かった…」
そう、いつも基哉は優しかった。
全身で私を想ってくれたから
私も全身で想いを返した。
もう1年、って言うけど
まだ1年でもある。
たかだか17、8の私にとっての1年の重みは
思ってるよりずっとある。
「…そうでしょうね」
「ありきたりでごめんね」
「いえ、十分過ぎるくらいです。そういえば先輩明日誕生日ですよね」

