放課後ハニー



知らなかったことが昨日からひとつ、またひとつと
私の中に入ってくる。
どうしてあの頃に知ることが出来なかったのかと
今更後悔させないでよ…


「橘先輩…?」


黙り込んだ私を伺うように、森見くんが覗き込んだ。


「あ、ううん。ごめんね」


思わず謝りふるふると頭を振って笑った
はずだったのに

上手く笑えなかったみたい。
彼はちょっと眉をひそめて反応に困った表情を見せる。


「それにほら、もう1年だし。ちょっと思い出しただけ」
「先輩…」


後輩にまで心配掛けちゃ
ダメじゃない…

なんとか『大丈夫』と言える顔を作らなきゃ…


「先輩。良かったら部室に来ませんか?」


俯きがちだった顔をハッと上げた。


「え…?」
「今まで来たこと殆どないですよね?ちょうど部活も休みですしどうですか?」


彼の突然の申し出に、一瞬迷いが生まれた。
感傷に浸ってしまいそうな気がして、だけど基哉がいた場所を覗きたい気もして。
気まぐれな提案でも嬉しく感じてしまう。



「まぁ…あんまり女性を呼べる場所でもないですけどね。男臭いし」


迷う私のことを察したのか、森見くんは一端引いた。
もし私が断るのなら、そうしやすいようにしてくれたのかもしれない。

だけどその言葉は
益々私の興味を掻き立てて


「…行ってもいい?」


応える要素としては十分過ぎるほどだった。