放課後ハニー



「それ、めっちゃ熱いですね」
「そうそう。それで思わず落としちゃった。ねぇ、森見くん今もしかしてエース?」
「えーっと…はい。改めて認めるとなんか照れますね」


曖昧ながらも肯定して、彼は困ったように笑った。

森見くんと初めて逢ったのは去年の夏頃。
基哉が教室に忘れたスパイクを届けに部室に行った時に一緒にいた。
『俺の秘蔵っ子~』と基哉に頭をくしゃくしゃされてた子が
今やエースを務めてる。

ふと、月日の早さと無情さを感じてしまった。


「先輩は?受験勉強とか頑張ってるんですか?」
「それなりにね」
「志望校ももう決めてたり?」
「うん。M大の工学部」



そう口に出して、ふと考える。
『勿体無い』と相模に言われたあの時の事。

なんとなく引っ掛かってしまって
自信を持って言ったつもりなのに、小さな不安に襲われた。


「M大かぁ…じゃあ基哉先輩の分までって感じですか」
「やだ、基哉そんなことまで言ってたんだ?」
「聞いてますよ~。もうベタベタなくらいでしたもん。
いっそ橘先輩をマネージャーにって話もあったんですが、『そんなことさせねぇ』って本気で怒って」
「え…ほんとに?」


初めて聞く話に一瞬どきりとする。


「あ、知りませんでした?」
「う…うん…」
「先輩あれでかなり惚気る人だったんですよ。そういうの普通敬遠されそうなものじゃないですか。
でも皆羨ましそうに聞いてたんです。なんか微笑ましくなるっていうか…俺もそのひとりで」