今までで一度だけ当たった覚えがあるなぁ…
去年の夏頃。
その時は基哉にあげたんだ。
屈んで取り出し口から缶を取ると
「っ!」
思った以上の熱さに手を離してしまって
缶は勢いのままに地面を転がり
「あ…」
追い掛けようとしたのも束の間、
誰かの足元に辿り着いた。
「すいませ」
「橘先輩?」
「ん…」
缶にばかり取られていた視線が
靴から足、上半身、ときて顔で止まる。
あれ、あぁ、そうだ。
制服姿で一瞬わからなかったけど、10番の子。名前が…
「森見くん!」
パッと思い出し、思わず手を打った。
彼は屈んで足元の缶を拾い
外側に付いた砂を丁寧に払いながら
「覚えててくれたんですか?嬉しいな」
そう言って顔を綻ばせ、それを差し出した。
たった今思い出したんだ、とは言えず
「ありがとう」と言って、セーターの袖で手のひらを覆い受け取る。

