涙腺がまた刺激される。
月明かりが歪んで簡単に零れたそれは、嗚咽も出ず静かに頬を伝っていった。
話を聞かされた瞬間は涙も何も出なかった。
でも後から後からじわじわと認識させられる基哉の不在という事実が募ったその瞬間から
私は一週間学校を休む事になった。
「もしそんな約束がなかったらとか、そもそも私が屋上になんていなければ、とか…
色んなこと考えた。だけど全部どうしようもなくて…だからせめて約束だけは守ろうと思ったのよ」
「それで今も毎日勉強して屋上に来て、サッカー部見て、ふたりで決めた大学に行こうと?」
相模の問いに顎で頷いて、寄せた膝に顔を乗せる。
「馬鹿馬鹿しいって…思うでしょ?…ガキみたいって…思うでしょ…?」
「…そんなことないよ」
「嘘!」
「ほんとだって」
「本気とか…確かに自分の恋心は自己満足なのかもしれない。
現に私はこのプレートのことも気付かなかったし、ただ恋に焦がれてただけかもしれない!
でもわたしにとっては―っ!」
「友響ちゃん」
一瞬我を忘れて昂っていこうとした感情が、私の両肩を掴んだ相模の手によって抑制された。
月明かりを遮り、真剣な表情で私をじっと見つめる相模。
また一筋、涙が流れるのを感じながら私も見つめ返す。
「本気じゃないなんて思わないよ。
ふたりでずっと育んできたものが個人の自己満足だと言える道理なんて俺にはない」
「だけど…っ!」
「それ以上決め付けると、友響ちゃんは彼のことも否定することになるよ」
それでいいの?と言わんばかりの口ぶりに、思わず詰まった。
「馬鹿馬鹿しいともガキだとも思わない。そうやって気持ちの整理を付けようとするのは
実に自然なことだよ。今まで身近な人、亡くしたことないでしょ?」
「…うん……」
「だったら尚更君のペースでいいんだよ。それは誰かに急かされるべきじゃない」
まるで言い聞かせるようにして、ゆっくりと相模は言葉を紡ぐ。
どうしてだろう、今まであんなに苛立っていたのに、不思議と心が凪いでいった。

