「さ、この後はモテモテの御方のご登場ですな」
「御方って…」
「おはよーう」
ざわめく教室内に、話題の張本人がやってくる。
昨日の告白も、当然朝の告白もそんな気配は微塵も感じさせないといった雰囲気で
飄々と教壇の上に立った。
クラス委員の号令でようやく静かになった室内で
「それじゃ出席取る代わりにテスト返すぞー」
と、再びざわつかせることを言う。
…確かに見た目はかっこいいとは思う。
長身で整った顔立ち。
現に女の子達はきゃあきゃあしてるし、授業の進め方も嫌いじゃない。
生徒へのご機嫌取りもなかなかのもの。
名前が呼ばれた生徒
特に女子は、ちょっとうきうきしながら返却されるテストを貰いにいくのが
ありありとわかる。
それを、相模はきっとわかってる。
だけど私はむかつくんだ。
みんなにいい顔するあの飄々とした感じも
そのご機嫌取りも
どこか嘘くさく見える。
まるで人を正面から見据えていないような。
だから本気だと言ったあの言葉も
台詞めいて聞こえてしまう。
大人の余裕
というものなんだろうか…
「橘友響」
教師面して私を呼ぶ
その余裕はなんなのよ
こっちは苛立って苛立ってしょうがないというのに。
ひと呼吸置いて席を離れ、教壇の前に立った。