白い道に設置された街灯。
赤い煉瓦家に橙色屋根の家々は、森林の様に立ち並ぶ。
砂漠を越えた先にある街だけあって砂埃っぽいかと思っていたが、あまりの違いにジルクは辺りを見回す。
すれ違い人々の殆どは、金髪碧眼と外国だけあってジルクの様に白髪に赤い目は建永されがち。
慣れっこの彼にとっては、冷たい視線は普通と変わらない。
「どこへ行ってもかわらねぇな……ん?」
広いロータリに出たジルクの視界に入る人だかり。殆どは女性。日本の芸能人でもいるのか? 
気になってきたジルクは最後尾まで近づいてみる。
「魔術は水の精霊と契約を結ぶ事で、水質から形まで自在に操れる様になります。こういう風に噴水みたく噴出すことも、水の輪を作ることも出来ます」
人だかりの真ん中で得意げに説明をする男性。優雅な声にいちいち苛立ちを感じさせる髪の触る行為。
胡散臭そうなテレビショッピングを見るような目で、しばらく眺める。
「水を浮かすって原則に反してるだろ。どう見ても超能力だな…ってことは、近くで念力を使う奴が居るはず…お、居るじゃねぇか」
女性客に混じって目立たない太目を男。手を見ると、指を巧みに動かし周りを警戒しつつ今度は砕けた水の輪が水滴となって空中を浮遊。
笑えない芸人の漫才を見る様に、薄ら笑みを浮かべる。
「魔術師は世界で珍しいって言われてるくらいだから。けど、これはひでぇ」
「…魔術じゃないの?」
視界の外から聞えた声の方向に体を向けると、呆然とした少女が居た。まるで夢を裏切られた子供の様に。
ズバリいうわよ…でなく、キッパリとジルクは告げる。
「魔術って言うのは、超自然的な力に沿って自分の想像を具現化する術なんだ。その為には、魔方陣を介して自然界と契約を結び、力を借りるってのが原理だ、ん?」
ジルくは視線を落す。少女は下を向いて小さく握った拳を震わせていた。覗き込むように、どうした? と短く尋ねる。
上げた顔には大粒の涙。潤んだ瞳はジルクに向けられた。
言葉を失った彼は唖然と、罪悪感に苛まれる。