ある日


 魔界と人間界、同じ位置にあたる場所に2人の大きな相対的な力を持つ者が現れたことによって、時空に歪みが起こった。



 僕も彼女も、突然どこか分からない場所に飛ばされた。と彼は言う





 目が覚めると、周りには自分を避けるように大きく円状に歪んだ大地




「メリ−嬢。君が着物を着ているのは、キャリアが着せたのが大元だろ?」




 唐突な問に、静かに頷く


「見えたのは歪んだ大地だけじゃなかった……───」





────……隣には、黒地に白の大きな華が幾つも描かれ、華の縁には綺麗なピンクのラメが施された上品な着物を着た女性が倒れてた





「直ぐに聖職者だと気付いたよ。彼女は明らかに異質だったからね…」




 彼の髪と同じ色の睫毛が重なる




「殺さなかったのは何で?」


 その時は既に戦国時代。

 同じ場所に敵がいれば、殺られる前に殺るのが上等手段




「くす。何でかな…」



 薄らと笑みを浮かべ、キャリアを思い出しているんだろうその顔に、不謹慎ながら綺麗だと思う



「この状況を作り出したのも彼女の仕業かとも、もしかしたらの仮説も考えたよ。五大公爵の僕が戦時中に、刺客が訪れるのはまれにあったからね…。
だけど、なぜだか彼女を殺す気はなかった。」





 そして暫く彼女が起きるのを待った。




 大きな目を見開いて、「おはよう」と、彼女は言った。

 自分がバンパイアなんて事には、気付いてたはずなのに屈託のない笑みを向けてきた。





 攻撃しないのかと問う自分に、「あなたが私に攻撃をしないから私もしない。」と静かに告げる




 「ここはあなたの能力?」と優しく問う彼女に首を振れば、「そお」とだけ返ってくる。