トウセが時計を見ると、闇が完全に世を包む時刻を示してた






「すでに闇の時刻か……
どうりで暗い訳ですねー」




 静かに窓に目をやれば、黒い世界に月の光りが照らされ、幻想的な世界が広がる




「皮肉だな。野蛮な者が活動するはずの夜の世界の方が綺麗だなんて…







─── 嫌な空気ですよ、ほんと…」





 悲しげに呟かれた言葉



 受け取り手がいないと思って呟かれた感情を、静かに受け取った者がいた





「綺麗、か…」




 普段の敬語は取り払い、屋根の上に立っている男





「シルディ様。時間ですわ」



 透き通った女の声がかかる




「そうだな」




 声だけが聞こえる女には、さも興味が無さげに遠くを見つめる




「私(わたくし)、敬語のシルディ様も好きですが、敬語を取り払ったシルディ様も好きですわ!」




 明るい声にうんざりする




「だからなんだ。
お前の能力は受け取ったが、感情まで受け取るとは言ってないはすだ」


「ええ、そうですわ。
天使だった私はバンパイアの貴方に魅力されてしまったの。だから貴方に私を差し出したわ!
でも、そのおかげでシルディ様も望み通りになった。そうでしょう?」




 だから、貴方への感情は私へのご褒美と言わんばかりの女に、シルディは何も言い返さない





「天使をその体に取り込んだバンパイア・シルディ公爵。
その名のおかげで、貴方は残酷で有名になった。



ねぇ?今度はあの女性で何をなさるの?」





 臆見かつ、傲慢な発言