神様の悪戯




「じゃ、頼むな」

表情一つ変えず、感情のない言葉を残しその人は歩き出そうとした。

「ちょっ、あい…」

呼びかけた私にその人の目が訴える。


『名前で呼ぶな』



周りには、名前で呼び掛けた事は分からなかったと思う。



まったく、これが人に頼む態度かな…
音楽の先生なら弾けるんじゃないの?
なんで、私が…

第一、音楽は明日だしッ!!



心の声がバレないように、細心の注意を払って私は言った。


「…ぁ、一ノ瀬…先生、あの今日、音楽ないはずですが…?」

間違ってもこの人との繋がりだけは他に知られてはならない。

初対面であるかのように必死で装った。


「あぁ、明日の古典と交換になった。じゃ、伝えたからな?他の生徒にも言っといてくれ」



その人、一ノ瀬先生は私の言葉を待たずに今度こそ背を向け歩き出した。




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