ぬいぐるみに恋する少女






屋上のドアノブに手をかけたとき


後ろからそう確かに聞こえた。




俺は振り返り須川を見た。




須川は何もなかったように


穏やか顔でぬいぐるみを撫でている。





「今…“愛してる”って…。」



須川は俺の存在に気付かなかったらしく


俺を見て息を止める。



かなりうろたえてる。




「俺に言ったの?」


全力で首を振る彼女。



そこまで必死に否定されるとさすがに落ち込むぞ。




「じゃあ…」



俺はぬいぐるみに目を移した。


俺の行動に須川は警戒してぬいぐるみをギュッと抱きしめる。





「そのぬいぐるみに言ったの…?」



須川は警戒した目で俺を見る。



しかし、彼女は何も話さない。