「…おい!…おい!」




かすかに聞こえてきた一樹の声。顔を上げるとぼんやりと一樹の顔が見えた。やだなぁ私、幻覚でも見てんのかな?さっき出ていってはずなのに、今ここにいるわけないじゃん。





「…おい!こんなとこで寝てんなよ。風邪ひくだろ。」





寝てんなよって……誰が?…私?私寝てたの?じゃぁ今のは夢?



私の隣に立っている一樹に手を伸ばした。本物だよね?本当に一樹だよねぇ?椅子から立ち上がり一樹の顔に触れる。本物だぁ。そう確信した瞬間、我慢していた涙がぶわぁと溢れ出した。





「一樹…一樹…。
 もう帰ってこないかと思った。」




とめどなく溢れてくる涙。

これ以上一樹を見ていたら涙が止まんなくなっちゃうよ。
私は一樹の顔が見えないようにぎゅーと抱きついた。すると、一樹も私の背中に腕を回して抱きしめてくれた。