残された神崎さんと私。何か話した方がいいのだろうけど、いきなり憧れの人を前にして何も言葉が出てこない。

「陽菜ちゃん」

「はい!」

「蓮は見た目はあんなだし、態度や言葉遣いも悪いけど、悪いやつじゃないから。嫌いにならないでやって」

「大丈夫です。月島さんが優しい人だって、ちゃんとわかってますから」

私が泣き止むまで背中を撫でていてくれた手の温もりを、時折見せる微笑みを
私はもう知っている。

「私、月島のためにピアノを弾きたい」