虹に降る雨〜瞭の想い〜

「ん?」


「良い?」


「?」


不思議そうに俺を見上げる。


チョコの箱を間に置き、ベンチを跨いで彼女を見つめた。


「りょ……」


呼ばれた名前を唇で拾う。

きっとチョコより甘い君の唇。


「もっと食べたい。ウチ、行く?」


「行かないです。」


「なんで?」


唇が触れたままなのに、甘くない返事。


「仕事、行く。」


「行くの?」


「行くよ。……行かないの?」


「………行く。」


開けなくても知っている。

大きなハートに描かれた文字。


「チョコ、食べてね。」


「うん。少しずつね。」


食べないでとっておく。

大切な言葉と心が詰まっているから。









『大好き』








ーfinー