空が徐々に漆黒に染まってゆく。

それを見つめながら、少女―アリス―は立ち上がった。
「今日もまた、御伽噺のようにはならなかったわ。私は「アリス」なのに。」
つまらなさそうに言い、家へ戻った。

アリスは、不思議の国に憧れを抱いている。
アリスは決して恵まれた環境で生活しているわけではなかった。
家族からは拒絶され、世界からも拒絶された。
不思議の国は、必ず「アリス」を求めてくれる。
アリスは、ただ求められたかった。

不思議の国で、幸せに過ごしたかった。
幻想(ゆめ)だと分かっていても、白兎が来るのをただただ待ち続けるだけだった。

ベッドの中で、今日も空想の世界を広げる。
アリスの唯一の安らぎの時間。
心が癒える時間。

アリスは深い眠りについた。