半眼で言い切って、窓から放る為に歩き出す。
害虫呼びがショックだったのか、目を見開いたまま固まっているアイーダは、暫く大人しくしていたが いざ外に出そうとするとハッと意識を戻した。

「害虫?! わたくしが害虫?! なにいってますの!」
「…虫を食って生きてる植物が庭にあるな」

ボソっと言うと、瞬時に顔色を変えるアイーダ。 実際そんなの生えてねぇが、この一言は衝撃だったのか青ざめてみえた。
う、嘘ですわよね? 冗談ですわ!と右腕の先でボソボソ聞こえる。

「……」
「あ、こら! 人様の話は最後まで聞きなさいって習いませんでしたの?!
損しますわよ! わたくしを放るなんてことしたら ばちがあたりますわ!」
「……」
「待ちなさい! 待ちなさいったら!!」
「……」

必至で俺の右手親指と人差し指にしがみ付くアイーダに無言の俺。
不安になってきたのか、激しい抵抗と共に俺を見上げる顔も焦りが見える。


「わたくしを一週間 預かって下さったら 何でも願いが叶うのにお外に放るつもりですの!? 」

最後の切り札とばかりに叫んだアイーダの台詞にぴたりと止まる俺。
その隙をねって、アイーダは白羽を使ってふよふよ飛ぶ。


「…一週間で何でも叶う? 」
「ええ」

睨みあげる俺に屈しないとばかりに見下げる女。
一週間…この煩いのと一週間…。 だが恩賞として何でも叶うといいう女。
信用できるかと言えば、微妙だが追い詰めた際の言葉だ。多少 信憑性はある。
そう思ってしまうほど『何でも叶う』というのは魅力的だ。

しばし考えた末、半眼でニヤリと笑みを浮かべる。後に悪人のようだったと
聞かされた笑顔を。


「ふん。上等だ。 1週間我慢してやろうじゃねぇか」



こうして 俺は『なんでも願いが叶う』ことを代償に天使もどきを
家で飼うことになった。