笑ってるから。


言い終わらないうちに降ってきた唇。

そっと触れた唇は、暖かくて、優しかった。

貴方の唇は、私のカイロだね。


「ん?どうした?」


「あったかいね。瞭くん。」


「そ?じゃあ、俺は美羽のカイロだ?」


「だね。カイロくん。」


そっと胸に頬を寄せてみた。

トクトクと鳴る心臓の音。


「私ね、ここで産まれたんだ。」


「ここで?」


そう。私は、この公園のこのベンチで毛布にくるまれて眠っていた。

空から落ちる雨を避けるように、大きく生い茂った枝が伸びる樹の下のこのベンチに。

すやすやと眠っていた。


「だから、雨は嫌い……?」


「ううん。雨も好きになった。瞭くんが教えてくれたから。」