愛情の距離




その場から足が動かない。



俺は立ちすくんでいた。





「バイバイ」





この言葉が、頭から離れない。
むしろ響いて、
頭の中をぐるぐる回ってるんだ。



「おい、尚、あの子が夏奈ちゃんだったんじゃねぇの?!」

「…あぁ……」

「行っちまったじゃねぇか!いいのかよ、おいっナンシー邪魔!」



潤の声さえ遠くに聞こえる。
俺の頭の中には、

夏奈の声しか響いていなかった。





あぁ、どうして。
こんなにも俺は弱いんだ?



それは





夏奈を愛しているから。



離れるのが、怖いのに、

離れられるのが、怖いのに、



拒否されるのが怖くて、追いかけられないんだ──