「言って。」


「言わない。」


「嫌って言わないから。だから、言って。」


「やだ。言わない。」


「言って。」


「言わない。」


「……………言ってくれなきゃ………さよならできない。」


ポンチョの中で、涙を必死に堪えた。

静かに空気が動く。

離れていく温もりが、無言のさよならを言っているようで、その温もりを追い掛けられない。

そんな弱い自分が情無くて、大嫌い。


『私の彼だからあきらめて。』


『あなたに大和は渡さない。』


そんな風に言えば良かった?

泣いて、すがれば良かった?

私には、涙を流す資格は無い。

奪い取ることも、泣いて叫ぶこともできないのだから。