「泣いたよ。日向があたしにキスしたあの日も…」
「悪いと…思ってる」
「謝らないで。…慰めてよ」
この言葉に、俺は顔を上げた。
綾葉を泣かせた張本人は俺なのに。
何を言ってるんだ?
「…あの日から、日向はあたしを避けてる。それが一番悲しかった。…寂しかった。あたしは日向に逢いたかったよ。これからも毎日逢いたいの」
「俺は…」
「楽しいことは一番に日向に言いたい。泣きたくなったら日向に慰めて欲しい。…お願いだから、離れていかないで…」
違う、俺じゃない。
綾芽が俺を避けてたんだろ?
「逢いたかった」と、好きな女が目の前で泣いていて。
何が本当なのか考えてみる。
離れていたのは……俺?
───気付いた。
俺たちは今、この瞬間、きっと誰よりも臆病者だ。
たぶん…他の誰かがこの事を知ったら、あきれるだろう。
それぐらいに。
俺は、俺よりも遥かに小さい綾芽を抱きしめた。

