「あの子、この間の日曜日に子供おろしたんだって!」「だよねー、尻軽っぽいもんねー!」


いやだ。もう。


ありさはフン、と鼻を鳴らした。

だから女の子って嫌。自分に魅力がないからって人の悪口ばっか言って。


彼女らが言っている事はありさの事だ。ありさがあまりにも完璧だから。みんな嫉妬してるのだ。

だから、あんなうそっぱちを。


どーせ、1時間後にはみんなその事しか言わなくなるわ。


「本当だって!あの子が産婦人科に行くのを友達の彼氏のお兄ちゃんの友達が見たんだって!黒い帽子を深く被って紫のマフラーを首に巻いてたんだって!」


ありさは呆れて目を丸くした。そんなダッサイ格好するわけないじゃない。ばっかじゃないの・・・・・。





ありさはみんなが羨む女の子だ。168センチの素敵なプロポーション。整った小さい顔。お祖母ちゃんがロシア人だからか、淡い茶色の髪。申し分ない成績。尊敬したくなるフッションセンス。そして、親の有り余るほどの財産。

そして、何をしても気品があって、クールに見える立ち振る舞い。

まさにみんなが憧れる全てだ。


だからみんなが嫌うのだ。彼女の完璧さが許せないから。性格とか関係なく嫌う。それが超おもしろいのだ。嫌な奴ら。


もちろんありさは嫌な奴なんかじゃない。根っからの良い子だ。困ってる子は見捨てないし、ぶりっ子なんかもしない。

というか、そんな必要ないし。男の子から寄ってくるもの。


ただ、他の人より自分という存在に誇りを持っている。それがまた、ありさを美しく見せている理由なのだ。


けど、ありさは馬鹿みたいなナルシストじゃない。私、可愛いでしょう?みたいなオーラをだしてるわけでも。そんなのただの痛い子ちゃんだ。