「あのね、先生。」


1時間キッチリ家庭教師を演じ終えた私は、今は先生ではなく普通の女子大生に戻っていた。

だから、先生って呼ばれてもなぁ……、イマイチ、ピンとこない。


「……あ、私?」

「うん。」

「ごめん、ボーっとしてた。」


えへへ、と笑ってごまかす。

ってか、今日何度めのごまかし?


「あさって、バレンタインでしょ?だから、お母さんと一緒にチョコレート作ったの。」

「私が貰っていいの?」

「うん。」


ありがとう、と言って受け取った小さな袋に思わずこぼしそうになるため息。

バレンタインか……。