「私と付き合って?・・・と言ってもむりでしょうから」

「あたりまえだ!」

「別れてくれたら、今日のことは聞かなかったことにしてあげる」

な、・・・馬鹿馬鹿しい・・・。

「それとも、噂を流しましょうか?」

「噂?」

「そう、川上さんはゲームのターゲットとして沢田君と付き合ったんだって!って」

「ふざけるな!」

「ふざけてなんかいないわよ。噂って怖いのよ。すごい速さで広まると同時に噂自体が変化していくの・・・川上さんの耳に入る頃には、どんな話になってるんでしょうね?」

この女・・・まともなのか?

「1週間まってあげる。・・・その間に別れるか、噂を流されるか決めてね」

それだけ言うと富谷は、俺たちから離れて行った。

「暁、気にするな。川上さんと別れることなんてねえぞ」

洸一が俺の肩に手をおく。

「そうだよ、俺たちも出来るだけ協力するから」

心配そうな聡。

「洸一、聡。ありがとう。・・・でも、ちょっと待ってくれ。俺もいろいろ考えてみるから」

「そうか・・・でも、何かあったら相談しろよ」

「おう。そうさせてもらうよ」

洸一と聡が心配してくれるのもわかってるが、これは俺の問題だ。

自分でなんとかしたい。



教室に戻ると、純は机に向かって勉強している。

別れる?・・・いや、無理だ。できねぇ。

俺は自分の席に着いて机に顔を伏せる。

噂を流される?・・・俺は何とかなるが。

・・・純にすべてを話すべきか・・・騙されたことがトラウマになってる純に話をして、信じてもらえるのか?

純から『好き』って言葉は聞いたことがない。

俺のことそんなに好きじゃなかったりするのか?

どうする?

どうしたらいい?

純が一番傷つかない方法はどれだ?

ちくしょー。

何でこんなことになるんだ。


その時、ガラッっとドアが開いて未那が入ってきた。

そうだ。未那に聞いてみるか・・・・。